
白血球テロメア長の短さは脳卒中、認知症、老年期うつ病のリスクの高さと関連
提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン
白血球のテロメア*a長(leucocyte telomere length;LTL)が短いと、脳卒中、認知症、および老年期うつ病(late-life depression;LLD)の個々のリスクも複合的なリスクも高いとする研究結果が、「Neurology」に2025年6月11日掲載された1。
LTLは生物学的年齢の指標であり、遺伝2と生活習慣2,3の両方の影響を受けるとされる。米マサチューセッツ総合病院ブリガム・センター脳ケア研究所のTamara N. Kimballらは、UKバイオバンク参加者のうち、LTLと3種類の加齢関連脳疾患(脳卒中、認知症、LLD)のリスク因子に関する情報がそろっている欧州系の356,173人を対象に、ベースライン時のLTLとこれらの疾患との関連を調査した。また、脳ケアスコア(brain care score;BCS)が良好であれば、LTLとこれらの疾患との関連性が弱くなるかについても検討した。BCSは、高血圧、血糖、BMIや飲酒や喫煙の習慣など、脳卒中、認知症、LLDのリスクを高める修正可能な因子を評価する指標であり、15点以上を高スコア(脳ケアが良好)、10点以下を低スコア(脳ケアが不良)とした。LTLは定量的PCRで測定し、長さの3分位により、短・中・長の3つに分類した。主要評価項目は、脳卒中、認知症、およびLLDの複合アウトカム(いずれかの初発)、副次評価項目は各疾患の個別発症とした。
Cox比例ハザードモデルを用いて、まず複合アウトカムとの関連を検討したところ(対象は諸条件を満たした294,898人)、長LTL群を基準とすると、短LTL群では複合アウトカムのリスクが11%増加することが示された(ハザード比〔HR〕1.11、95%信頼区間〔CI〕1.08-1.15、P<0.001)。LTLを連続変数として解析した場合でも結果は同様で、LTLが1標準偏差(SD)短くなるごとに複合アウトカムのリスクは3%増加した(同1.03、1.02-1.04、P<0.001)。次に個別発症との関連を検討したところ、長LTL群を基準とすると、短LTL群では、脳卒中リスクが8%、(同1.08、1.02-1.15)、認知症リスクが19%(同1.19、1.12-1.26)、LLDリスクが14%(同1.14、1.09-1.18)、それぞれ高かった。
BCS(高・低)とLTL(短・中・長)と組み合わせて疾患リスクを検討した結果、低BCS・長LTLの群を基準とすると、低BCS・短LTLの群では、複合アウトカム(HR1.11、95%CI 1.07-1.16)、脳卒中(同1.10、1.02-1.19)、認知症(同1.17、1.08-1.28)、LLD(同1.13、1.07-1.19)の全てのリスクが有意に高かった。逆に、高BCS・短LTLの群では、高BCS・長LTLの群を基準とすると、これら全てにおいて有意なリスク上昇は認められなかった。このことから、BCSが含む修正可能なリスク因子の状況が良好であれば、LTLとこれらの疾患との関連性は弱くなることが示唆された。
一方、LTLと脳卒中、認知症、LLDとの因果関係を検討するため、UKバイオバンク内のゲノムワイド関連解析(GWAS)データを用いて選定した単一塩基変異(SNV)を道具変数とする2サンプルのメンデルランダム化(MR)解析を実施したが、因果関係は確認されなかった。
論文の上席著者である米ハーバード大学医学大学院のChristopher D. Andersonは、「これらの結果は、健康的な生活習慣が細胞の老化を遅らせ、加齢関連脳疾患の発生頻度を減らす可能性があり、特にリスクの高い人においてはその効果が顕著であることを示している」と述べている。(HealthDay News 2025年7月12日)
注釈
*a
真核生物の染色体の末端にある構造で、保護キャップの役割を果たしている。細胞分裂のたびに短くなり、個体が経験する累積的な生物学的ストレスを反映しているため、生物学的老化の重要なバイオマーカーとされている。
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