
身体疾患の発症はその後のうつ病発症リスクの上昇と関連
身体疾患の発症は、その後の大うつ病性障害(以下、うつ病)の発症リスクの上昇と関連し、特に発症後1カ月以内や筋骨格系の疾患を発症した場合にはリスクが高くなることを示した研究結果が、「The Lancet Public Health」に5月9日掲載された1。
コペンハーゲン大学(デンマーク)リグスホスピタレット心臓センターのPer E. Sigvardsenらは、デンマークの医療データベースを用いて全国規模の集団ベースのコホート研究を実施し、身体疾患発症後にうつ病を発症するリスクを網羅的に調査した。1995年1月1日から2022年12月31日までの間にデンマークに住んでいた者を対象とし、まず5年間をウォッシュアウト期間として、この間に身体疾患またはうつ病を有していた者を除外し、652万8,353人を1億77万621人年、追跡した。診断記録や入院記録などから対象者が発症した疾患として31種類を特定し、これらを9つのカテゴリー(循環器系、内分泌系、呼吸器系、消化器系、泌尿生殖器系、筋骨格系、血液疾患、がん、神経系疾患)に分類した。Cox比例ハザードモデルを用いて、生年月日、性別(男性、女性)、雇用状況(就労中、失業、退職、障害年金、学生、不明)、同居状況(単身、同居、不明)、対象疾患より前に発症していた身体疾患の有無を時変共変量として調整して、うつ病発症のハザード比(HR)を算出した。
追跡期間中に211万4,575人(32.4%)が身体疾患を、111万2,043人(17.0%)がうつ病を発症した。身体疾患を発症していない者に比べて、何らかの身体疾患を発症した者でのうつ病のHRは2.26(95%信頼区間〔CI〕2.25-2.28)であった。疾患カテゴリー別に検討すると、うつ病のリスクは筋骨格系の疾患の発症で最も高く(HR 2.50、95%CI 2.49-2.51)、内分泌系の疾患で最も低かった(同1.35、1.34-1.36)。また、身体疾患の発症から1カ月以内のうつ病リスクは高く(同4.62、4.50-4.74)、この「1カ月以内」リスクは、男性(HR 5.71、95%CI 5.50-5.93、女性:同3.81、3.67-3.95)、60歳以上(HR 9.04、8.63-9.47)、身体疾患が原因での入院(同11.83、11.25-12.45)、2つ以上の身体疾患(同8.92、8.74-9.11)で特に高かった。身体疾患の発症から10年以上が経過してもリスクは有意に高く(同1.84、1.82-1.86)、発症20年後のうつ病の累積発症率は疾患ありの男性で18.9%(95%CI 18.8-19.0)、女性で24.4%(同24.3-24.5)、疾患なしで生まれ月と性別をマッチさせた男性で6.9%(同6.8-7.0)、女性で10.7%(同10.6-10.8)であった。
著者らは、「本研究結果が有する公衆衛生上の意義は大きい。精神保健サービスをプライマリケアや専門医療の現場に適切に組み入れることを優先するような保健施策を立てるべきで、それによりうつ病の早期発見・早期治療が容易になるだろう」と述べている。(編集協力HealthDay)
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